さて、何故新造せずにイラストリアス級の改装で済ませようとしたのか、というと二度の戦争により大きく疲弊したイギリスの経済事情に依るところが大きい、と言っていいでしょう。
もちろん、イラストリアス級は大改装を実施すれば当面第一線に参加できると考えられていたことも影響していますが、イラストリアス級の改装費用は250万ポンドと見込まれていた一方で、同規模の空母を新造するとなると700万ポンドが必要と考えられていました。
当然、艦齢その他の面から見ると新造艦の方が最終的に有利になる場合もありますが、差し当たって数をそろえるという観点からは安上がりな方がよい、と判断されています。
これに基づき1946年夏から基本計画の策定が始まっていますが、マルタ級大型空母の時と同様に格納庫の方式を開放式に変更するか否かで揉めています。
この時には太平洋上での作戦行動においては大西洋上でのそれに比べて閉鎖式の優位点は低下する、と判断されて開放式の案が優勢でしたが、結局閉鎖式の利点が開放式のそれよりも上回ると考えられています
さて、1947年1月に入ると具体的に話が進展し、各艦の運用寿命を20年延命することが決定され、改装順序も決定されています。
第一艦はフォーミダブル、続いてヴィクトリアス、インドミタブル、イラストリアス、インプラカブル、そして最後にインディファティガブルとされました。
1948年2月に最終案が承認されていますが、この案を一言で言えば「ハーミーズ級の装甲空母版」でした。
基準排水量は27,180t (満載33,000t) 、備砲は4.5in連装両用砲8基から新型の3in連装両用砲6基に、格納庫から上の上部構造は完全に一新されるものの飛行甲板の3in装甲鈑はそのまま残されていますが、一方で格納庫部分の舷側装甲は撤去されています。
また全幅も艦の安定性と機関スペースの確保、加えて水中防御改善のために拡張されています。
ボイラーも旧来のアドミラルティ式からアメリカ製のフォスター・ホイラー式に換装されていますが、タービンは変更されていないため最大速力に変化はありません。
最初に改装を受けることになったのはヴィクトリアスでしたが、これはフォーミダブルが戦中の損傷などの結果としてスクリューシャフトや飛行甲板の歪みの問題やその他様々な点でヴィクトリアスより状態が悪かった事が影響しています。
1950年10月からポーツマス海軍工廠で改装工事を受けたヴィクトリアスですが、改装期間中にも様々な改設計が行われています。
例えば当初アメリカ製のものだった3in連装両用砲を、自国製のものが開発完了したことによりそれに変更されています。
また、1952年2月の軽空母トライアンフによるアングルドデッキ試験の好成績を受けてヴィクトリアスも同年6月にアングルドデッキを装備するように変更され、更に1953年5月にはアングルドデッキの角度を8.5度に増大されています。
更に同年7月には当時最新鋭のType984対空レーダーを搭載することとなり、改装後のヴィクトリアスやイーグル、アーク・ロイヤル、そしてハーミーズの外観上の大きな特徴となっています。
1954年4月に工事を完了し生まれ変わったヴィクトリアスですが、時代の流れは既に構想当初の世界情勢から大きく変化していました。