●最後のイラストリアス級 -ヴィクトリアス- (後編:イギリス艦隊型空母の終焉)
さて、イギリスは第二次大戦終結直後に最大の植民地を失い、大きく疲弊した国内経済にとって深刻なダメージとなります。
そのしわ寄せは当然軍事部門にも押し寄せ、特に建造中であった空母群や就役中の艦艇の改装工事は極めて困難な状況となっていました。
これはイラストリアスシリーズの近代化改装が計画された理由であり、またそれが挫折した最大の要因でもあります。
イラストリアスシリーズの改装計画は第一艦のヴィクトリアスのみで取り止めとなり、残る5隻分は本来補助的な役割を担うはずであったセントー級の3隻と改セントー級であるハーミーズの4隻で代替されることとなります。
1950年代末期に就役していた艦隊型空母はイーグル、アーク・ロイヤル、ヴィクトリアス、セントー、アルビオン、ブルワーク、ハーミーズの7隻です。
しかし1960年代初頭にはセントー級の3隻は能力不足とサイズ上の制限で新型機の運用が困難となったためコマンド空母に転籍しています。
残る4隻の空母も、サイズ的には米新鋭超大型空母群はおろか第二次大戦艦であるエセックス級よりも小型なため改装による運用能力向上にも無理があり、差し当たってイーグルとアーク・ロイヤルの代艦として2隻の艦隊型空母の建造が企図されます。
これが後の"CVA-01"級ですが、時の政権の空母全廃政策のあおりを喰らって廃案となり、まず最古参であったヴィクトリアスが1960年代末に退役。
次いでイーグルが1970年代初頭に退役していますが、アーク・ロイヤルのみは1960年代中期に最新鋭のF-4K戦闘機運用能力付与のための改装工事を受けて暫く艦隊にとどまった後、70年代末に退役しています。
ハーミーズはイーグルと同時期の退役が見込まれていましたが、コマンド空母兼対潜空母となっていたブルワークの代替のためにヘリ空母に改装されています。
当時の政権が過激とも言える空母全廃政策を取った背景には当時イギリス最初の原子力潜水艦ドレッドノートが就役したことにより戦略ミサイル原潜建造の目処が付いたことも理由の一つでしょう。事実、現在のイギリス海軍は戦略ミサイル原潜を中心とした編成といっても間違いではないでしょう。
当然空母運用の財政的負担に耐えられなくなったことも原因です。
ハーミーズは1980年に、当時建造中であったインヴィンシブル級STOVL空母に先駆ける形でスキージャンプを設置してハリアー戦闘攻撃機の運用試験を実施しています。
そして1982年に勃発したフォークランド紛争においてイギリス派遣艦隊旗艦として活躍し、1985年に退役。翌年インドに売却されてヴィラートと改名され、現在はインド唯一の空母として、旧ロシア空母で2008年改装完了予定の新空母ヴィクラマーディティア引渡まで在籍する予定です。